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★ 日向家・リビング
【Ｎ】「ある休日の朝の日向家。その日に起こった大事件が夏美ちゃんとギロロ伍長の関係を大きく変えようと は、まだ誰も知る由もなかったのです」 ソファーに座り、ファッション雑誌をパラパラとめくる夏美。 向かいでオカルト雑誌を読む冬樹。 ふと、冬樹が手を止めて姉を見る。 冬樹「姉ちゃん」 夏美「なーに？」 冬樹「最近さ、姉ちゃんと伍長、仲いいよね」 ソファーから飛び上がらんばかりに驚く夏美。 夏美「（赤面して）なっ、ななななな何を言い出すのよっ！」 冬樹「だってさ、何かふたりで（庭を指差し）そこにいる時間が多くなった気がするんだ。まあ、前からよくお芋 焼いてもらったりとかしてたんだろうケド・・・僕の気のせいでもなさそうな感じなんだけど？」 夏美「（うろたえて）きっ、きっ、気のせいよ！ 気のせい！」 冬樹「でもさ、軍曹もモアちゃんも言ってたよ。タママもドロロも言ってた。クルルは・・・何も言わないけど 知ってそうだし。僕もそう思うんだ」 夏美「（頬を染めて俯き）いや、そのぉ・・・」 冬樹「付き合ってるの？ ギロロと」 再度跳ね上がる夏美。 夏美「（全身茹だったようになり）つ！ つ！ 付き合ってるって！ アンタ！」 冬樹「照れなくてもいいよ。僕は姉ちゃんと伍長、お似合いだと思うからさ」 夏美「（また俯き）別に付き合ってるワケじゃ・・・」 冬樹「でも伍長のこと、好きなんでしょ？」 それには答えず、ただ小さく身を窄める夏美。 冬樹「告白したの？」 夏美「（ビクッと顔を上げ）してないわよ！」 冬樹「ふーん。付き合ってるワケじゃないってことは、まだ伍長も何も言ってないんだ」 夏美「・・・え？ 何それ？」 ハッ、と慌てて口を押さえる冬樹。しまった、という表情。 夏美「冬樹、それ・・・どういうこと？」 冬樹「（ゆっくりと立ち上がり）いや・・・その・・・」 途端、駆け出して部屋を出る冬樹。 冬樹「ごめん姉ちゃん！ 今の忘れて！」 夏美「ちょっと待ちなさい！ 冬樹！」 ２階へと消える冬樹。 茫然とそれを見やり、正面を向いて視線を宙に浮かす夏美。 夏美 《どういうこと？・・・ギロロが何も言ってない、って？・・・》 夏美、庭に目を向ける。 夏美 《もしかして・・・告・・・え？・・・ギロロがあたしを・・・ってコトなの？》 心臓が早鐘を鳴らす夏美。頬が再び紅色に染まる。瞳が潤む。 胸の高鳴りを抱えたまま、ソファーから立ち上がり、庭に面したサッシに立つ。 野営テント内から音が聞こえる。 夏美 《ギロロ・・・あたしのこと・・・》 ゴクリ、と唾を飲み込み、サッシに手を掛ける夏美。 夏美 《確かめたい・・・》 カラカラ、とサッシを開け、サンダルを履いて庭に出る。 テントに近付き、声を掛ける夏美。 夏美「（言いにくそうに）・・・ギロロ、いる？」 バサッ、とテントの入り口が開き、出てくるギロロ。 彼の姿を見た途端、顔を赤らめる夏美。 ギロロ「どうした？ 夏美」 夏美「（震える声で）え・・・えーとね・・・その・・・ちょ、ちょっと訊きたいんだケド」 ギロロ「・・・何だ？」 向かい合い、見詰め合ったまま暫く佇むふたり。 突然。 ゴゴゴゴゴゴゴ、と凄まじい地鳴り。 夏美「（驚いて回りを見て）えっ？ 何？ 何なの？」 ギロロ「（夏美に近寄り）伏せろ！」 すぐさま銃を次元転送して、周囲を警戒するギロロ。 慌ててギロロの傍らに屈む夏美。 その上空、猛烈なスピードで、黒塗りの飛行船のような巨大飛行物体が横切る。 高さにして300メートルほど上空、飛行船にしては速過ぎるスピード。 真っ直ぐに西澤タワー方面に飛んで行く。 地鳴りが終息し、飛行物体を見るふたり。 夏美「何、あれ？ 飛行船だったらもっと音がしない筈だし・・・」 ギロロ「バリアを張ってないということは、敵性宇宙人か？ それにしては随分堂々とし過ぎてるな・・・偵察 して来る！」 即座に飛行ユニットを転送して、装着するギロロ。 夏美「待って！ あたしも行く！」 ギロロ「駄目だ。お前は残れ。敵味方の判別出来ない内は危険だ」 夏美「でも！ あれがもし、地球をすぐに攻撃するつもりだったら後手に回っちゃうでしょ？ あたしが行かな きゃ、誰がみんなを護るってのよ？」 頑として譲らず、ギロロを見詰める夏美。 夏美「（右手を差し出し）パワードスーツ、貸して！」 ギロロ「（溜め息をついて）判った。ただし、危険を感じたらすぐに引き返せ」 夏美「そん時はアンタの首根っこ掴んでも一緒に帰るからね」 にっこりと笑う夏美。ふっ、と微かに笑って見詰め返すギロロ。 転送されたスカルマーク入りのスウィッチをギロロから受け取り、押す夏美。 眩い光と共に、スーツを装着する。 ブースターに点火し、並んで上空に昇っていくふたり。 西澤タワー方面に飛行を続ける巨大船と同じほどの高さに到達する。 接近する為に加速し、飛行物体との距離を詰める。 ★ 西澤家・敷地内上空 ギロロ「距離2000、もう少し近付く。それにしても相当デカいな、これは」 夏美「攻撃、してこないね」 ギロロ「敵性でないことに越したことはないが・・・よし、ここからは目標の側面に位置を取る。加速を続け、 目標との距離は1000を維持した上で、最終的には目標の上部に位置する」 夏美「オッケー！」 更に加速して、緩やかに右側面に移動するふたり。 飛行物体右横に位置し、目標を確認しようとした、その時。 カーンッ！という大きな金属音が飛行物体先端より放たれる。 ふたりを周囲の空気をビリビリと震わせて、一気に通り過ぎる。 夏美「（思わず目を瞑り）きゃっ！」 ギロロ「くっ！ 何だ！」 直後。 ユニットの機械音が消え、ふたりのブースターが突然停止。 背中の羽根もすべて消失する。 落下を始めるふたり。 夏美「嘘っ！ 何でっ！」 ギロロ「（背中のユニットの電源を確認し）駄目だ！ 完全に止まった！」 一気に地上との距離が縮まる。下には西澤家敷地内の森。 真っ逆さまに落下するふたり。 ギロロ「（夏美の上半身を抱え込み）掴まってろ！」 夏美「（ギロロにしがみ付き）うん！」 更に地上の森林が迫る。 ギロロ、手榴弾を５個転送させ、片っ端からピンを抜いて真下に投げ下ろす。 ギロロと夏美、しっかりと抱き合って身体を丸める。 直後、大音響と共に上がる爆炎と爆風。 爆風の勢いで一旦跳ね上げられ、緩やかな放物線を描いて、森林に落下するふたり。 ガサガサガサッ、と枝を叩き折り、樹々を抜けて落ちる。 ギロロが夏美の下になり、衝撃を和らげて地面に転がる。 夏美「（上半身を起こし）ギロロ！ 大丈夫!?」 ギロロ「（続いて起き）ああ、これくらい何てこともない。夏美は大丈夫か？」 夏美「うん。ギロロのお陰で無事よ」 立ち上がって、上空に浮かぶ飛行物体を見上げるふたり。 夏美「それにしても・・・さっきの音、何だったのかな？」 ギロロ「潜水艦のソナー音のようだったな」 夏美「ソナー？」 ギロロ「ソナー、もしくはアスディック、水中で物体の位置を探知する装置のことだ。水中での相手を特定する 為に音波を発して、それを受信することで位置を測定する。アクティブソナーとも呼ばれるが・・・本来 軍事目的なら、敵の音を拾うパッシブソナーが主だ。ああやって自分から音を出す敵は、普通いない」 夏美「そうね・・・確かに」 ギロロ「（背中のユニットを下ろし）やはり電源が入らん。非常用電源の反応もない。（夏美を見て）お前の スーツの方はどうだ？」 夏美「（パーツのいくつかを確認して）ダメ、何の反応もないわ。（頭部のビームサーベルの柄を抜き）これも 使えない・・・どうしちゃったのかしら？」 ギロロ「あのソナー音を浴びてからだな・・・いずれにせよ、ここに留まるのは危険だ。奴らが次を手を打つ前 に、一旦撤収する。幸い、ここは西澤家の敷地内だ。恐らく今頃、セキュリティメカと親衛隊がこっちに 向かっているだろう。本館に向かって移動する。走れるか？」 夏美「問題ないわ」 ギロロ「よし、行くぞ！」 西澤邸本館方面を目指して走り出すギロロと夏美。 森の中を数百メートル走った時、上空の飛行物体から黒い小さな飛行艇が発進する。 それは一気に地上に接近し、森の樹々スレスレを飛ぶ。 飛行物体も覆い被さるように近付いてくる。 小型飛行艇がふたりの真上に並走し、突然、レーザー砲を出して攻撃を始める。 ギロロ「くっ！ やはり敵確定か！」 銃を２丁転送させ、ひとつを夏美に渡す。 ギロロ「使え！」 夏美「ありがと！」 ふたりが一旦離れ、樹の幹に身を隠す。同時に上空の小型飛行艇に銃を向ける。 途端。 再び、カーンッ！という金属音が大型飛行物体より発せられる。 一瞬顔をしかめるも、引き鉄を引くふたり。 しかし、レーザー弾は発射されない。カチッカチッ、と引き鉄が空打ちする。 ギロロ「何だと！」 夏美「嘘っ！ これもダメなの？」 ギロロ「馬鹿な・・・こっちに来る直前に点検したばかりの銃だ！」 再び走り出すギロロと夏美。 執拗に追ってくる黒い飛行艇。 それの下部から、砲身の異様に長いライフルが剥き出しになる。 ゆっくりと動き、夏美に照準を構える。 振り返ってそれを確認したギロロ、ハッ、となって走りながら夏美に寄る。 ギロロ「（飛び掛って）避けろ！ 夏美ィィ！」 夏美「えっ！ （ギロロに右手で跳ね除けられ）きゃっ！」 直後、ライフルが火を噴く。 バシュッ！と一直線でレーザーが宙を裂き、ギロロを射抜く。 【スローモーション】 身体を起こしてギロロを振り返る夏美。 全身を硬直させ、地面に落下するギロロ。苦悶の表情。 両目を見開き、固まる夏美。 【スローモーション終了】 ドサッ、と倒れ込むギロロ。ピクッ、と一瞬身体が跳ねる。 茫然と立ち竦み、彼の姿を見詰めて震え始める夏美。 夏美「（わなわなと震え）・・・嘘・・・」 ギロロ「（少し顔を上げ）・・・逃げ・・・ろ・・・夏・・・美ッ・・・」 途端。 凄まじい光を発するギロロの身体。 思わず両腕を顔の前に翳し、目を固く閉じる夏美。 いきなりギロロのすぐ上に、光で作られた蜘蛛の巣状のネットが出現。 あっと言う間にギロロを包み、即座に塊となって、すぐに消滅する。 光の奔流も終息、小型飛行艇は上昇して行き、大型飛行物体に吸い込まれる。 直後に大型飛行物体は、ユラリ、と姿を歪めて、宙に融けるように消えていく。 辺りは静寂。 恐る恐る腕を下ろし、目を開ける夏美。 誰もいない。そこを風が吹き抜ける。 ゆっくりとした動作で跪き、ギロロが倒れていた辺りの宙に手を伸ばす。 彼の身体を抱き上げるような動作をするが、手は空を切る。 それから掌で地面を撫でる。 瞬時に、先ほど彼が撃たれた直後の場面が脳裏に蘇る。 夏美、再度全身を震えさせ、両眼を思い切り見開き、涙を落とし始める。 首を左右に振り、涙の滴を撒く。 夏美「（涙声）・・・やだ・・・ギロロ・・・ギロロぉ・・・」 両手で頭を抱え、全身を丸くする夏美。 夏美「（腹の底からの絶叫）嫌ァァァァァァァァァァ!!!!!」 直後、フッ、と意識が遠のく夏美。 そのまま前のめりに、うつ伏せで地面に倒れる。 気を失う夏美。ブラックアウト。 ★ 日向家・夏美の部屋 フェードイン。ゆっくりと目を開ける夏美。 こちらを覗き込む冬樹、モアの顔。 冬樹「（笑顔で）姉ちゃん！ 気が付いた？」 モア「（笑顔で）夏美さん！」 自分がベッドに寝せられて、私服に戻っていることに気付く夏美。 すぐ横には冬樹とモア、更にベッドを囲んでケロロ、ドロロ、タママの姿。 少し離れて、ノートパソコンのタッチパッドで指を動かしているクルル。 夏美「（ぼんやりとして）あたし・・・どうして・・・」 ケロロ「（近寄ってきて）夏美殿、ご気分は如何でありますか？」 冬樹「西澤さんとポールさんが連れてきてくれたんだ。姉ちゃん、森で倒れてたって」 夏美「あたし・・・ギロロ・・・」 ハッ、としてベッドから飛び起き、辺りを見回す夏美。 夏美「（茫然と）ギロロは？・・・ギロロは何処？・・・」 全員が沈黙。俯いて目を逸らす。 夏美「ねぇ・・・誰か答えてよ・・・ギロロは何処なの？・・・」 クルル「（パソコン画面を見たまま）生体反応不明、固体反応不明だ」 夏美「（目を見開き）え・・・？」 クルル「要するに、おっさんはペコポンにはいねぇ、何処行ったかも判らねぇ、っつーこった」 ケロロ「（キッと睨んで）クルル！」 クルル「黙っててどうすんだよ。真実は伝えなきゃなんねぇだろ？」 直後、ベッドから飛び降りて部屋を出ようとする夏美。 慌てて抱き付いて止めるモア。 モア「夏美さん！ 落ち着いて下さい！」 夏美「（必死で振り解こうとして）離してモアちゃん！ ギロロを捜しに行く！」 モア「駄目です！ まだ体力が戻ってないんですから！ 無茶です！」 冬樹「（同じく夏美の身体を押さえて）駄目だったら姉ちゃん！」 夏美「離して！ お願い！ ギロロぉ・・・ギロロぉ！」 ケロロ「（怒声）落ち着きなさいッ！ 夏美殿ッ！」 ハッ、とその場の全員が驚いてケロロを注目する。 クルルも操作を止めて、ケロロを振り向く。 ケロロ「（ふう、と息を吐き）大声を出してすまないであります。しかし、敵が何者か判らない以上、これ以上 夏美殿を危険に晒すワケにはいかないのでありますよ・・・どうか座って、落ち着いて我輩の話を 聞いてほしいのであります・・・」 何かが抜けたような表情になる夏美。 モア、彼女の身体を優しく誘導し、ベッドに腰を下ろさせる。 それを見届けて、コホン、と咳払いをしてから話し出すケロロ。 ケロロ「ギロロが行方不明になって、何とか捜したい気持ちはありましょうが、我々もどう出て良いやら判ら ないウチは迂闊に動けないのであります。無謀な行為と判っていることをさせる訳にはまいらんのです」 ケロロ、ふっ、と一旦息を継ぐ。 ケロロ「しかし夏美殿の気持ちも、我輩、痛いほど判るのでありますよ。あのような頑固者で不器用な堅物を、 どれほど夏美殿が大切に想ってくれているか・・・隊長として、幼馴染みで腐れ縁の親友として、こんな に嬉しいことはないのであります」 その言葉に、頬を薄く染めて俯く夏美。 満足気に頷いて続けるケロロ。 しかしその後に、急に神妙な顔になる。 ケロロ「（声を曇らせ）それに・・・今回の件、隊員が行方不明になったのは、我輩の初動体制のミスであり ます・・・正体の判らない飛行物体を司令室で感知した後の策が、ギロロ伍長の出撃を止められず、 後手に回ってこういう事態に陥った・・・これは我輩の失策であります。ですので夏美殿、どうかお気に なさらず、すべての責任は我輩にあります故・・・」 夏美「（穏やかな口調で）ボケガエル・・・」 ケロロ「（しっかりとした声で）夏美殿、こっからは我輩に汚名返上の機会を与えてほしいであります。必ず・・・ 必ずギロロを捜し出し、夏美殿の許へ連れて帰るであります。それは我輩だけでなく、小隊一同全員の 誓いでありますから。夏美殿は、とにかくギロロの無事を信じて待っててほしいのであります・・・」 ケロロの言葉の後、頷く一同。 タママ「大丈夫ですよナッチ、僕らに任せるですぅ！」 ドロロ「拙者も微力ながら、尽力させて頂くでござる」 クルル「（背中を向けたまま）ま、心配するこたぁねぇよ。先輩のしぶとさは俺様がよーく知ってっからよ。 くっくー」 モア「夏美さん、私も頑張りますから。安心して待ってて下さい。てゆうかぁ、安心立命？」 夏美「（全員を見回し）みんな・・・」 ケロロに目をやる夏美。視線は落ち着いている。 夏美「（しっかりとした声で）解ったわ。お願い、ギロロを捜してきて」 ケロロ「（満面の笑みで）了解であります！」 その場で回れ右をして、隊員たちに向くケロロ。 クルル、ゆっくりと立ち上がって、ドロロ、タママと並ぶ。 眉を寄せ、キリッ、とした表情のケロロ。 ケロロ「（凛とした声で）ケロロ小隊各員に告ぐ！ 只今の時間1105を持って第二級警戒態勢を発動！ 敵対 名称“アンノウン”に設定し『ギロロ伍長探索救出作戦』を決行する！ タママ二等、ドロロ兵長は奥東 京市一帯、及び周辺を捜索、痕跡や情報を得た場合はその場で司令室に連絡せよ！ 同時にタママ 二等は、今回の件で西澤家に協力を要請、承諾を得た際は一致して事に当たれ！」 タママ「了解ですぅ！」 ドロロ「心得た！」 ケロロ「クルル曹長は“アンノウン”のデータ収集、及び対策立案を実施、すべての想定事項を鑑みて如何な る事態にも対処出来るようにせよ！ モア殿はレーダー監視を強化、ペコポン周囲１パーセクまで探索 範囲を拡げ、亜空間及び次元転移の痕跡を見逃さないように！」 クルル「あいよ」 モア「解りました、おじさまっ！」 ケロロ「それでは全員、配置に付けッ！」 タママ・ドロロ・モア「「了解ッ!!!」」 敬礼する３名。クルルは１テンポずれて敬礼。 安心した笑顔で姉を見る冬樹。 冬樹「後は軍曹たちに任そうよ、姉ちゃん。大丈夫、きっと伍長も戻ってくるから・・・」 夏美「（僅かに微笑んで）うん・・・」 ★ 日向家・中庭 野営テント前のブロックに座って、焚き火の跡を見詰める夏美。 憂いでいっぱいの瞳、悲痛な表情。 ふと、ギロロが撃たれた瞬間を思い出し、目を見開く。 あっという間に涙が溢れ、頬を伝って落ちる。 右手の甲でそれを拭う夏美。 夏美 《ダメ、泣いちゃ・・・無事で戻ってくるって信じなきゃ・・・》 顔を上げてギロロのテントを見る夏美。 天幕に描かれた吊り目と目が合って、一瞬、ドキッ、とする。 少し鼓動が早まる。 そして膝を抱えて、再度顔を伏せる。 夏美 《ギロロ・・・早く戻ってきて・・・あたし・・・アンタに訊きたいことあるのに・・・》 暫く、動かない。 突然。 物置の向こう、玄関方面からこちらに、ピコピコ、という足音が近付いてくる。 それを聞いた夏美、ハッ、と思わず顔を上げて立ち上がる。 夏美「え？・・・まさか・・・（少し笑顔になり）ギロロなのっ？」 足音は更に接近し、家屋の角を曲がってこちらに姿を現す。 直後。 驚きの余り、両目と口を開けて固まる夏美。 そこの現れたのは、紫色のケロン人。 夏美「（声を震わせ）・・・ギロロの・・・お兄さん・・・」 ガルル「久し振りですな、ペコポンの女戦士、日向夏美殿」 両手を後ろに組み、真っ直ぐにこちらを見るガルル。 夏美「どうしてここへ・・・」 ガルル「何、ご心配なさらぬよう。ただし今回は休暇ではなく、任務として参りました」 夏美「任務？」 ガルル「ええ。ケロン軍本部より勅命を受けて、再びここを訪れた訳です」 ゴクリ、と唾を飲んで、眉を顰めてガルルを見る夏美。 ガルル「既に本日起こった事例については把握しております。未確認飛行物体の飛来と、我が弟・・・ギロロ が行方不明になっていることも、です」 夏美「（間髪入れず）ギロロは何処にいるのっ!?」 ガルル「敵性宇宙人に拉致され、拘束されていると判断してます」 夏美「じゃあ・・・（僅かにホッとしたような顔で）生きてるのね・・・？」 ガルル「九割九分、と思われます。絶対とは申せませんが」 夏美、その言葉に安堵したように表情を和らげる。 微かに潤む下瞼に右手の人差し指を添える。 ガルル「（ふっ、と息をつき）つくづく我が愚弟は、貴方に心配ばかり掛けているようですな」 夏美「（頬を染め）そ、そんなことは・・・」 ガルル「ところで・・・只今から私はケロロ小隊中央司令室に向かいますが、貴方も来て頂きたいのです」 夏美「（驚いて）え？ あたしも？」 ガルル「ええ。今回、貴方も話を聞かねばなりませんよ」 ガルルの重厚な面持ちと発言に、緊張感を覚える夏美。 【Ｎ】「突如登場したガルル中尉、果たして本部勅命の任務とは？ ケロロ小隊と夏美ちゃんに、これから何が待 つのか？ そしてギロロ伍長を拉致した敵性宇宙人の正体と目的は？ 波乱の物語は、次回へ続く！」 To be continued... [chapter02] |
