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★ 日向家・リビング
【Ｎ】「えー、皆様、新しい年を迎え、どのようなお正月を過ごされてらっしゃいますでしょうか？ ここ日向家で は、ついこないだ結婚したばかりのギロロ伍長と夏美ちゃんが、お正月のマターリとした雰囲気の中、 お茶しようとしてるところです。時は１月２日、1020でありました」 ソファに胡坐をかいて座り、銃をウエスで拭いているギロロ。 彼の前にコーヒーを淹れたマグカップを、コト、と置いて、目を細めてギロロを見詰める夏美。 夏美「（少し微笑んで）軍人に正月休みはないの？」 ギロロ「（顔を上げて、見詰め返し）正月の挨拶も行事も、取り敢えず昨日の内に済ませただろう。もう今日から は通常と変わらん。軍人足るもの、有事に即応出来なければ意味がないからな」 夏美「そー言うだろーと思ったわ・・・じゃあ、お茶の時くらいは銃を置いてよね。はい」 カップを持ち上げて、スッ、と彼の眼前に差し出す夏美。 ギロロ、それに目をやり、背凭れに銃を立て掛けてから受け取る。 ギロロ「（フッ、と笑って）すまんな」 笑顔を返し、自分のマグを取って彼の隣に座る夏美。 ラング・ド・シャが乗った皿をテーブル上で引き寄せ、マグに口を付けようとする。 途端。 ピンポーン・・・と、玄関のチャイムの音が響く。 一瞬眉を顰め、マグをテーブルに置いて立ち上がり、ギロロを見る夏美。 夏美「（訝し気に）誰かしら？ お客さん来るって聞いてなかったケド・・・」 ギロロ「俺も行こう。アンチバリアを展開しておく」 夏美「（頷いて）よろしくね」 マグカップをテーブルに乗せ、額の階級章を操作してアンチバリアを張るギロロ。 ★ 日向家・玄関 共にリビングを出て、玄関に向かうふたり。 三和土の手前、玄関の昇り口まで来てから、ドアに目をやって、ハッ！と動きを止める。 ドアの側の磨りガラスに、背の低い二頭身ほどの人物が数人の影が映っている。 夏美「（籠った声で）ケロン人？ タママやドロロじゃなさそうだし・・・お義兄さんたちだったら前もって連絡して くるでしょうし・・・一体、誰？」 ギロロ「下がっていろ、夏美・・・（銃を転送して握り）俺が出る・・・」 不安気にギロロを見詰め、ドア向こうの影に再度目線を送る夏美。 それから一歩、言われた通りに後退る。 三和土に降り、慎重な足取りで扉に近寄り、銃の安全装置を外すギロロ。 背伸びしてドアノブを掴み、ガチャッ、と静かに開く。 直後。 ギロロ、いきなり目が合った外の人物を認識した瞬間、短く息を継いで固まる。 異変に気付き、声を掛けようとする夏美。 しかしゆっくりと開かれていく扉の外を見た瞬間、小さな驚きの声を上げて凍て付く。 ふたりとも目を丸く見開いて、玄関先に立った４人のケロン人を茫然と凝視している。 紅いマントを纏って腕組みをした人物が、前に進み出る。 ダークケロロ「久しいな、ふたりとも・・・空中都市での戦い以来だな」 ミルル「（笑顔で、お辞儀をして）ご無沙汰してました、皆さん」 シヴァヴァ「（右手を挙げ）よう！ 遊びに来てやったぜ！」 ドルル「・・・再会・・・」 ダークケロロ「それと・・・お前たち夫婦に、挨拶しようと思ってな。時間を少しもらいたいのだが？」 あまりの突然の登場に、あんぐりと口を開けたまま立ち竦むギロロと夏美。 ★ 日向家・客間 炬燵を囲んで、クッションを椅子代わりに座るケロン人一同。 全員が妙に神妙な面持ち。ケロロ、咳払いをひとつして全員を見回す。 ケロロ「（頭に破魔矢）あけまして、おめでとうございますであります（一礼）」 ダークケロロ「（頭にお札）うむ、初春のお慶びを申し上げる（一礼）」 ミルル「（頭に注連縄）旧年中は大変お世話になりました（一礼）」 ドルル「（頭に門松）・・・賀春・・・（一礼）」 ギロロ「（頭に鏡餅）平素のご無沙汰を、お詫び申し上げます（一礼）」 シヴァヴァ「（頭にお飾り）今年も、どうかよろしく頼むぜ（一礼）」 クルル「（頭に『微吉』の御神籤）いやいやどもども、まんずまんずごきげんやっしゃ（一礼）」 物凄く眉を寄せて、全員を見渡す夏美。手にはグラスや素焼きのカップを乗せた盆。 お菓子やおつまみを乗せた盆を持って、苦笑いをして隣に立つ冬樹。 夏美「（ジト目で）・・・どっからツッコんでいいか判らないし・・・（冬樹を見て）これって一回ツッコんどくべきかし ら？ 特にクルル」 冬樹「（微笑んで）ケロン式の新年の挨拶なんでしょ？ 神聖な儀式なんだよ、きっと」 夏美「儀式、ねぇ・・・（溜め息）」 ケロロ、夏美と冬樹を見上げて大きく頷く。 ケロロ「その通りでありますよ。ケロンでは、この挨拶がなければ新年を迎えたことにはならんのであります。 （ニヤ、と笑い）夏美殿もギロロの奥方となった以上、来年からはやってもらうでありますよぉ〜、ゲロゲ ロリ」 夏美「（頬を染めて）え!? 嘘っ！」 【イメージ映像】 赤い煌びやかな振袖姿の夏美、座布団の上に正座。 夜会巻きの髪型にした頭の上に、二段重ねの鏡餅を括り付けている。 【イメージ映像終了】 ケロロ「ケロン人の奥方となったからには、当然でありましょう（更にニヤリ）」 ギロロ「（頭の鏡餅を下ろし）俺は無理強いさせるつもりはない。夏美はペコポンの流儀ですればいいだろう。 （ケロロを見て）貴様は普段から『その星の文化を大切に』などと言ってガンプラに現を抜かしている癖 に、こういう時に掌を返すのだな？」 ケロロ「（ギロロを見返し）あーたこそ、普段バリッバリの頑固モンな癖に、夏美殿には砂糖10倍のメープルシロ ップよりも甘いんだから。首尾一貫しなさいよ！」 ギロロ「（怒り）貴様にだけは言われたくないわッ！」 ダークケロロ「（お札を外し）やれやれ、新年から喧嘩とは頂けんな。もうひとりの吾には、もっと大きく構えてほ しいものだ。この輩が吾と同じ遺伝子とは、俄かに信じられん」 ドルル「（門松を下ろし）・・・同感・・・」 ミルル「（注連縄を外し、ダークケロロを見て）ケロロ様は覇道を学ばれたのですからね。お気持ちは解ります が・・・（微笑んで、小声で）でも、ちょっと羨ましいと思ってません？」 隣のミルルを見詰め、少しの間動きを止めるダークケロロ。 ダークケロロ「（頬を掻き）・・・見抜かれてしまったな、ミルル」 ミルル「（満面の笑みで）はい、ありがとうございます」 炬燵の上に、盆からのコップやおつまみを並べ始める夏美と冬樹。 ギロロがそれらを上手く配置して、サポートしている。 夏美「（未だ赤くなったまま）もう、何を話し出すのよまったく・・・」 ギロロ「とにかく、この挨拶は俺たちだけでするのだから、夏美は心配せんでいい」 夏美「（笑顔で）ありがと、ギロロ」 ケロロ「おやおや、すっかり尻に敷かれてますなぁギロロ伍長。ま、カカア殿下になることは至極当然と予想さ れたこ・・・」 ジャキィッ！と転送した銃を、ガボッ！とケロロの口に中に突っ込むギロロ。 途端に息が出来なくなって、ジタバタともがき始めるケロロ。 ギロロ「（重厚な声で）さて・・・早速だが新春隠し芸大会を始めるか？ まずは俺からだ」 クルル「タネも仕掛けもないってか？ く〜っくっくっくっく・・・」 冬樹「伍長、掃除大変だから後からにしようよ。何もないけど、少し摘んでもらって」 ニッ、と笑って銃を抜くギロロ。即座に転送させて仕舞う。 ゲホゲホッ、と咳き込んで涙目で冬樹を見詰めるケロロ。 ケロロ「（ウルウルと）止めて下さって感謝するであります、冬樹殿ぉ」 ダークケロロ「（ふう、と溜め息をつき）冬樹・・・結構ドライなのだな・・・」 冬樹「ところでさ、大軍曹」 ダークケロロ「（顔を上げ）何だ？」 冬樹「急に地球に来たのはどうして？」 ダークケロロ「それはな、（指を２本立てて掲げ）ふたつの理由があったからだ」 ケロロ「（不思議そうに）ふたつ？ でありますか？」 軽く一度、咳払いをするダークケロロ。 ダークケロロ「ひとつは、ケロン人とペコポン人の夫婦に挨拶する為だ」 夏美「（疑念を浮かべ）ねぇその話って、どっから聞いたの？ ギロロとあたしが式を挙げたのって、つい１週間 くらい前だもの。話が伝わるのが早いにもほどがあるわよ」 シヴァヴァ「何だよ知らねぇの？ 宇宙インタ・・・」 クルル「（大声）あーいきなりピロシキが食べたくなったなー奥さん！」 夏美「（驚いて）何よ急に大声出して！ びっくりさせないでよ！」 ギロロ「クルル、貴様・・・（眉を寄せて）何か隠してないか？」 クルル「（そっぽを向いて）ん〜、何のことかなぁ」 ケロロ「まあまあギロロ、目出度いことが知れ渡るのはいいこっちゃであります。大いに祝ってナンボでありま しょうよ」 ギロロ「（不満気に）まあいいだろう。正月から血を見ることもあるまい」 ケロロ「・・・先ほど我輩をそーしよーとしてた方はどこのどなたでしたっけ？（ジト目）」 ダークケロロ「（意に介さず）以前、吾はお前たちに、ケロン人とペコポン人の“繋がり”というものを知らされた。 その“繋がり”の中で夫婦となった者を、実際に見てみたいというのがあったのでな。そしてそれと は別に、もうひとつの理由は・・・（ミルルをチラ、と見て）ミルルを迎えに来た。吾の今住んでる星 に迎える為に、だ」 夏美「（感心したように）へぇ・・・」 ミルル「（笑顔で）ケロロ様にお慈悲を頂いて、今度移り住むことにしたんです。一旦は役目を終え、永い眠りに 尽いてたんですけど、ケロロ様のお陰でまたこうして皆さんにお逢い出来ました」 クルル「なーるほどな。やはりシステムに詳しい参謀は必要、ってな訳か」 ダークケロロ「（少し落ち着かない様子で）いや、参謀というつもりではなくだな・・・いや、その・・・何だ、アレと いうか・・・」 夏美「（微笑んで）お嫁さんにするつもりでしょ？」 直後、嘘のように真っ赤になって、湯気を出して凝固するダークケロロとミルル。 ダークケロロ「（大慌てで）いやいや！ 決してそれが先ではなく！ やましい気持ちなどこれっぽっち も・・・だからアレだ！ 吾はその！」 ギロロ「（フッ、と笑い）それほどうろたえんでもいいだろう。目出度いことではないか。かつて王を名乗った時の 貴様のように、堂々と振舞えば良いものを」 夏美「（ギロロを見詰め）まったくよね。変なトコでオロオロしても仕方ないのにね」 ケロロ「正月にお目出度いことが重なるのは大歓迎であります」 シヴァヴァ「（ミルルを見て）おいそれよりよぉ、持ってきたアレ、出してくんねぇか？ オラっち楽しみで来たん だぜ」 ミルル「あ、そうだったわね。（夏美を見て）お土産があるんですよ。それと、皆さんで頂くお酒も準備してきま した」 小さな桃色のリモコンを取り出して、アンテナを伸ばしてスウィッチを押すミルル。 フシュッ！と炬燵の横に転送されて現れる、大き目の段ボール箱。 ダークケロロ「手ぶらで来るのも何だと思ったのでな。吾が間借りしている星の特産品も入っている。それと 『清酒大火竜』の純米大吟醸が手に入った。遠慮せずに呑め」 ケロロ「（驚き）え！ マジで！ （拳を突き上げ）やっふーッ！」 クルル「ほぉ、10年に一樽しか仕込まねぇっつー“幻の大吟醸”か・・・こいつぁゴキゲンだぜぇ。くっく〜」 ギロロ「（夏美を見上げ）俺には水を持ってきてくれないか」 夏美「オッケー。折角だから『縄文水』のボトル、持ってくるわね（笑顔を浮かべる）」 ギロロ「すまんな（笑顔を返す）」 シヴァヴァ「（ドルルを見て）おめぇもいい加減、武器とか仕舞っとけって。これから呑むんだぜ」 ドルル「・・・了解・・・」 背中のユニットや腕のガトリング銃を身体から外し、転送させて消すドルル。 【Ｎ】「手土産持参で突然日向家を訪れたダークケロロ大軍曹一行。迎えた軍曹たちも、過去の戦いなどな かったかのような、超絶和気藹々とした雰囲気で宴会を始めたのでありました」 ★ 日向家・客間（15分後） 【Ｎ】「そして、乾杯から15分経過・・・」 コップの酒を一気に空け、ぷはぁっ、と満足気に息を吐くケロロ。 対してチビチビと一口ずつ味わいながら、堪能している表情で目を細めるダークケロロ。 他のケロン人たちも、それぞれに楽しそうに呑んで食べている。 冬樹はケロロとダークケロロの間で、夏美はギロロの隣で、それぞれ烏龍茶を飲んでいる。 クルル「（コップを軽く揺らして）くっく〜、やっぱ美味ぇぜぇ『大火竜大吟醸』・・・昔、一度呑んだッきりだかん なぁ」 ドルル「（フッ、と笑い）・・・愉悦・・・」 ギロロ「俺には解らんが、良い酒はやはり良い物なのだろうな」 夏美「でもアンタだって、美味しい水とそうでないやつの区別、つくじゃない？ お酒もそういう感じなのかな」 冬樹「（ギロロを見て）ホラ、お茶だってコーヒーだって味や香りの違いってあるからね」 ギロロ「そうか・・・なるほどな」 ケロロ「（ニコニコと）それにしても・・・そーでありましたかぁ、もうひとりの我輩。思ったより早く定住先が見付 かってよかったでありましたなぁ」 ダークケロロ「（頷き）うむ、まったくその通りだ。最初に降りた星での一騒動が、上手い具合に展開したので な。（シヴァヴァとドルルを親指で示し）間を置かずこ奴らが合流したのも、今となっては吾に良い 結果をもたらしたのだ」 シヴァヴァ「まったくだぜ。（全員を見回し）おう、おめぇら聞いてくれよ。最初にオラっちが行った時、コイツって ばよ、あんにゃろに頭ふん掴まえられてジタバタもがいてたんだぜ」 冬樹「あんにゃろ、って誰？」 ダークケロロ「吾の間借りしている家の・・・（チラ、と夏美を見て）家主の娘なのだが・・・」 シヴァヴァ「説明すんよか見た方が早ぇ。（ドルルに向いて）写真、持ってんだろ？ コイツらに見せちゃれよ。 ぜってーブッたまげるぜ」 ニッ、と笑うドルル。フシュッ、と手元に１枚の写真を転送させる。 それをギロロと夏美の眼前、炬燵テーブル板に置く。 同時に覗き込むふたり。同様に写真に目線を向ける冬樹、ケロロ、クルル。 直後。 見事にシンクロした動きにて、覗いた全員が凄まじい反動で仰け反る。 それはドルルと、その背後から彼をしっかりと抱き締めている女性の写真。 女性は夏美に瓜ふたつの容姿で、肌が薄い紫色。 ケロロ「（驚愕）のゎんですとぉーっ！」 冬樹「（驚愕）姉ちゃんっ!? 姉ちゃんなのっ？」 夏美「（慌てながら）嘘っ！ 知らないわよコレっ！ 何なのよっ!? 何の写真よっ!?」 ギロロ「（夏美をしっかり見据え）待て！ よく見ろ夏美！ そっくりだが別人だ！ 頭から触覚が出ているでは ないかッ！」 全員が改めて写真を覗き込む。 写っている夏美そっくりな女性の頭部から２本の触覚が伸びており、先端には赤い球体が付属。 クルル「（冷静さを戻し）確かに別人だな。コイツらの行った星、婦警コンビと同惑星系なのかも知れねぇな」 ケロロ「ポヨン殿とポヤン殿、でありますか・・・そう言われてみれば、納得であります」 ギロロ「（ドルルを睨み）・・・何故貴様がこういう写真を持っている？」 ドルル、写真を手にして、ギロロたちに向けて掲げる。 ドルル「（フッ、と笑い）・・・愛妻・・・」 途端、完全に思考も行動も停止するギロロ、夏美、冬樹、ケロロ、クルル。 沈黙。 沈黙。 沈黙。 ギロロ・夏美・冬樹・ケロロ「「「「ええええええええッッッッッ!!!!!」」」」 飛び上がって絶叫する一同。未だ凍結したままのクルル。 それを訝し気に見回し、ふう、と呆れたように溜め息をつくダークケロロ。 ダークケロロ「（眉を顰め）それほど驚くようなことか？ お前たちは喧し過ぎる」 シヴァヴァ「でもよ、確かにドルルみてぇな無表情超絶カタブツが嫁さんもらったとなれば、驚くのも無理ねぇと 思わねぇか？ だからさっき、オラっちが言ったろ。ぜってーブッたまげる、ってさ」 ミルル「（シヴァヴァを見て）失礼よ、シヴァヴァくん。ドルルさん真面目だから、あの人もきっとそんなところが気 に入ったんじゃないかしら？ まあちょっと暴走する時もあるけど、あの人だったらドルルさん止められる から、いい夫婦になれるわね」 ドルル「・・・恐悦・・・（目を細める）」 漸く落ち着きつつあるケロロたち。しかし未だに顔には驚きが貼り付いたまま。 ギロロ「（ふう、と息を継ぎ）・・・寝耳に水もいいところだ。まさか貴様も嫁を娶っていようとは夢にも思わな かった」 夏美「でも・・・（写真を改めて見て）幸せそうな顔してるわね、この人」 ケロロ「夏美殿と同じ表情でありますよ、ギロロと一緒の時の」 軽く目を見開いて、ケロロに目線を投げるギロロと夏美。 大きく同意したような動作で頷く冬樹。 ケロロ「恐らく、ドルル殿の奥方もドルル殿にゾッコンで、それがこの写真に表れてるのでありましょう。（ふたり を見て）夏美殿がギロロにゾッコンであるように、でありますよ」 直後、まったく同時に上気して真っ赤になり、顔から火と蒸気を上げるギロロと夏美。 ケロロ「しっかしこの正月に、３組の夫婦が出揃うとは思わなかったでありますなぁ」 冬樹「３組？ 伍長と姉ちゃん、ドルルとお嫁さんと・・・あと１組は？」 ケロロ「もうひとりの我輩とミルル殿、でありましょ？」 ダークケロロ「（赤くなり、焦って）だッ！ だから吾はまだだと！」 ケロロ「（ニヤリ、と笑って）“まだ”でありましょう？ 嫁さんにするつもりだけど“まだ”ですと。ゲロゲロリ」 ダークケロロ「（大声）だからそれはッ！」 ケロロ「（酒のグラスを掲げ）んではッ！ ３組の夫婦のご多幸を祈って乾杯でありますッ！」 ダークケロロ「吾の話を聞けぃッ!!!」 【Ｎ】「そしてケロロ軍曹一行とダークケロロ大軍曹一行は、時間が過ぎるのも忘れて大宴会を心ゆくまで堪能 して楽しんでいたのでした。ギロロ伍長と夏美ちゃんも、夫婦となった経緯を根掘り葉掘りインタビューされ まくって、照れくさいやら何やらでしたそーです」 ★ 日向家・中庭 アンチバリアを張って上空に浮かぶ、半球型の灰色の宇宙船。 一列に並ぶダークケロロ小隊。向かい合って立つギロロ、夏美、冬樹、ケロロ、クルル。 ダークケロロ「邪魔をしたな。だが・・・大変有意義な時間だった」 ケロロ「こちらこそ、楽しいひとときを過ごさせてもらって、感謝するであります」 ダークケロロ「いずれまた逢うこともあろう。それまで達者でいろ、もうひとりの吾」 ケロロ「お互いに健康には気を付けるであります、もうひとりの我輩」 ミルル「夏美さん、これからも夫婦仲良く、ですよ」 夏美「ありがとう、ミルルちゃん。アンタたちも、夫婦仲良く、ね？」 ギロロ「これだけは言っておく・・・嫁を泣かすような真似はするな、ドルル」 ドルル「・・・了解・・・」 クルル「ペコポンにある古代ケロンのシステムはどうするつもりだ？」 ミルル「封印しておきました。私でないと起動出来ませんから、使っちゃダメですよ」 シヴァヴァ「今日は逢えなかったけどよ、あの黒いヒーロー志願の野郎によろしく言っといてくれ」 冬樹「タママだね。うん、間違いなく伝えとくよ」 ガコン、と上空の宇宙船の下部ハッチが開き、白い牽引ビームが降り注ぐ。 光の中に整列する、ダークケロロ小隊の４名。 腕組みをするダークケロロ。それに視線を固定して居住まいを正すケロロ。 そして静かに、彼に敬礼をする。頷き返すダークケロロ。 ゆっくりとビームの中を浮かび上がっていく、ダークケロロ小隊。 やがて全員が船内に吸い込まれ、ガコン、とハッチが閉まる。 直後。 クワァッ、と一瞬だけ大きな光が中空に溢れ、宇宙船の姿が消える。 その次の瞬間には、何事もなかったような静けさが辺りを覆っている。 冬樹「（踵を返して）じゃ軍曹、後片付けしとこうよ。クルルも手伝ってくれる？」 クルル「めんどくせぇなぁ・・・タダとは言わねぇよな」 ケロロ「（笑顔で）後で我輩がお年玉あげる、ってのはどっすか？」 クルル「玉を落とす、ってのはナシだぜぇ。く〜っくっくっく」 冬樹に続いて、リビングに上がっていくケロロ、クルル。 身体を返して家の中に向かおうとする夏美。 ギロロ「夏美」 夏美「（振り返って）なぁに？」 ギロロ「（しみじみと）・・・良い、正月だな」 ふわっ、と柔らかく温かい微笑みでギロロを見詰める夏美。 夏美「（目を細めて）・・・ええ、素敵なお正月よね」 夏美の傍らに並ぶギロロ。 満面の笑みで、彼と一緒にリビングに上がる夏美。 遠くで、気の早いウグイスの啼き声が風に乗って流れてくる。 【Ｎ】「ダークケロロ小隊の突然の来訪に、驚きながらも満足な時間を過ごしたギロロ伍長と夏美ちゃんでした。 そしてこの時のいい雰囲気が、やがて３つの小隊を繋げる大きなターニングポイントとなるのですが・・・ それはまた別のお話です」 |
